CLAIM CHECK / 公開 2026年7月18日 / 更新 2026年7月26日
「100万円のAI研修が実質25万円」の読み解き
検証した主張100万円のAI研修が、助成金75%で実質25万円になる
「助成率75%」という制度は実在します。ただし、100万円の研修を買えば、誰でも自動的に75万円が戻るという意味ではありません。
75%は特定コース・条件下の経費助成率です。対象コース、会社・受講者・訓練の要件、1人当たり上限、申請時期、不支給時の負担、消費税の扱いを書面で確認してください。
何が事実か
厚生労働省の人材開発支援助成金には「事業展開等リスキリング支援コース」があり、2026年度の経費助成率は中小企業75%、中小企業以外60%です。 このコースは2026年度末までの時限措置です。一方で、主な要件には次のようなものがあります。
- 申請者が雇用保険適用事業所の事業主である
- 受講者が雇用保険被保険者である
- 訓練が受講者の職務に直接関連し、原則10時間以上である
- 訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を提出する
- 支給申請日までに事業主が訓練経費を全額負担する
- 支給対象経費に消費税は含まれない
したがって「実質25万円」は、制度上の最大助成率だけを使った条件付きの税抜き計算です。
誰に支給されるのか
助成金の申請者・受給者は、原則として研修を受けさせる事業主です。 研修会社や受講者個人へ、購入代金の75%が自動返金される制度ではありません。
- 事業主が、対象コースと受講者を決める
- 訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を提出する
- 計画に沿って研修を行い、事業主が対象経費を全額負担する
- 研修終了後に支給申請する
- 労働局の審査を経て、支給または不支給が決まる
つまり、購入時の値引きではなく、要件を満たした研修費の一部を後から助成する仕組みです。 不支給や減額になった場合の負担は、研修会社との契約に別の定めがなければ事業主側に残ります。
AI研修なら全部75%になるのか
なりません。AIという名称だけで対象コースや助成率は決まりません。 たとえば2026年度の「人への投資促進コース」では、高度デジタル人材訓練は中小企業75%・大企業60%ですが、 定額制訓練は通常、中小企業60%・大企業45%です。賃金要件等を満たした場合に加算される枠もあります。
事業展開等リスキリング支援コースでも、職務との関連、訓練時間、実施方法、LMSによる進捗管理などを個別に確認します。 厚生労働省の2026年度版資料は、AI研修費用は対象経費になり得る一方、セット販売されたAIツールの導入費用は対象外と明記しています。 既存アプリの操作説明だけ、またはコンサルティングだけの内容も対象にはなりません。
研修会社のビジネススキーム
この制度を使う研修事業の本体は、助成金の販売ではなく、企業向け研修の販売と実施です。 一般的な流れは次のように分解できます。
- 「助成対象になり得る研修」として企業へ案内し、商談を獲得する
- 企業の職務・事業展開に合うカリキュラム、時間、受講人数、価格を設計する
- 事業主が計画届を提出した後、研修会社が計画どおりに訓練を提供する
- 出席、実施内容、LMSの受講記録、請求・支払などの証拠を残す
- 研修会社は受講料を売上として受け取り、事業主は別途、労働局へ支給申請する
「助成率75%」は企業の導入ハードルを下げる営業材料になりますが、研修会社が支給を保証できるものではありません。 また、有償での申請書作成、提出代行、申請後の審査対応は社会保険労務士の独占業務です。 研修会社が無資格のまま、受講料に申請代行の対価を含める形も問題になり得ると厚生労働省は注意しています。
省略されやすい5点
1. 会社がいったん全額を負担する
助成金は購入時の値引きではありません。不支給や減額になれば、その分は会社負担として残ります。
2. 1人当たりの限度額がある
| 実訓練時間 | 中小企業・1人1訓練当たり |
|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 |
| 200時間以上 | 50万円 |
eラーニング・通信制等は、中小企業の場合1人15万円が限度とされています。受講人数、提供形式、訓練時間によっては、100万円の75%をそのまま受け取れません。 定額制サービスは別枠で、1人1か月当たり2万円が限度です。
3. 消費税は助成対象外
仮に税抜100万円の全額が対象となり、上限にもかからず75万円が支給された場合でも、税込の支払額は110万円です。 単純な現金差額は35万円で、「25万円」とは一致しません。実際の税務上の負担は事業者ごとに異なります。
4. 2026年5月から価格説明が厳格化された
厚生労働省は2026年5月14日から、経費助成を申請する場合、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出を求めています。 助成金利用者だけ価格が高い、合理的な理由なく高額な契約方法を選ぶ、といった価格設定は確認対象になります。
5. 「支給対象になり得る」と「支給される」は違う
研修会社が制度に詳しくても、最終的な支給可否を決めるのは労働局です。 「対象研修」「申請支援あり」という説明を、「必ず支給される」という保証に読み替えないことが大切です。
営業担当へ書面で聞く12問
- 想定している助成金の正式名称とコース名は何ですか。
- 当社と受講予定者が満たすべき要件を一覧でもらえますか。
- 研修のどの費目が支給対象で、どの費目が対象外ですか。
- 受講人数、1人当たり価格、訓練時間、実施形式を示してください。
- 1人1訓練当たりの限度額を反映した助成見込額はいくらですか。
- 消費税を含めた実際の支払額と、支給後の差額はいくらですか。
- 会社が全額を支払う時期と、助成金が支給される想定時期はいつですか。
- 不支給・減額になった場合、価格や契約はどうなりますか。
- 計画届の提出期限に間に合う根拠はありますか。
- 助成金を使わない顧客向けの通常価格と、価格差の理由は何ですか。
- 申請支援を行う人の氏名、所属、社会保険労務士資格を確認できますか。
- AIツール利用料やコンサルティング費を、研修費と分けて見積もっていますか。
この表現の査定
「75%」という率自体は実在します。しかし、申請者、対象コース、企業規模、訓練形式、人数別上限、消費税、支給時期、不支給時の負担を示さずに「実質25万円」とだけ伝えると、購入時の値引きや支給保証のように受け取られます。 研修内容の品質とは別に、営業表現としては条件を併記する必要があります。
よくある質問
個人事業主が自分でAI研修を受けても75%助成されますか
この助成金は、原則として事業主が雇用保険被保険者である労働者へ訓練を実施する制度です。 雇用する対象労働者がいない個人事業主本人の受講費を助成する制度ではありません。
研修会社が「採択済み」と言っていれば安心ですか
研修会社や講座単位の説明だけでは足りません。申請する事業主、受講者、訓練内容、実施方法、提出時期、支払状況ごとに審査されます。 何が確認済みなのかを書面で分けてください。
助成金が出なかったら研修会社が返金してくれますか
制度が自動的に返金を命じるわけではありません。不支給時の解約・返金条件は、契約前に研修会社へ確認する必要があります。
申請を全部任せてもよいですか
有償の申請書作成、提出代行、審査対応は社会保険労務士の業務です。 支援者の資格と契約主体を確認し、最終的には管轄労働局の最新案内に沿って判断してください。
参照した一次資料
本稿は2026年7月26日時点の公開資料をもとにした一般的な情報整理で、助成金の支給可否判断、申請代行、法務・税務助言ではありません。個別案件は管轄労働局、社会保険労務士、税理士等へ確認してください。
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